2006年 06月 03日
第4回6月 美食散歩に出かけませんか? |
case study04
「spiritual foodは美味しい」酒井礼子
第4回 6月 美食散歩にでかけませんか?
梅雨、何でこの字を書くのだろう。6月には雨、梅干も漬けますね。単純な発想で申し訳ありませんが、梅の実を干すのに天気のよい数日をねらって作業しないと、梅の実が水分を含んだままで美味しい梅干にならないと聞いた事があります。梅干と雨の因果関係は昔から深いものがあって「梅雨」いう言葉になったのかな…と、推測しているのですが。亜熱帯性気候のアジアでは「酸味のある料理」が食されてきました。疲れを和らげ、細菌を抑制する。日の丸弁当に梅干一粒、美しく、そして腐敗防止にもなることは皆さんご存知なはず。青果店の店先に梅の実、赤紫蘇の葉、ラッキョウなどが並ぶこの時期、初夏に出回る恵を年間通じて味わう有り難い知恵だ。梅干を漬け、ラッキョウを漬け、ハタマタぬか漬けなんて、何ヶ月後、何年後かのお味を想像しつつ雨の日をそんな風に過ごすのも楽しい。
もうひとつ雨の日の楽しみ方に読書は如何ですか?雨粒は音を吸収するから雨が降ると静かになるそうですね。気持ちを晴れ晴れとさせてくれて食欲が湧くような、食いしん坊な私ならでは、食の名随筆を今月はご紹介します。
先ずは、向田邦子。妹の和子さんと「ままや」というお店を開いてしまったほど(赤坂にあったのですが現在は閉店)食べることが大好きな向田さん。お料理の本もありますが、「父の詫び状」は懐かしい、暖かい食卓の情景がそこかしこに見え絶品です。
それから池波正太郎。江戸の味が粋な文章が味わえます。「散歩のとき何か食べたくなって」などの随筆を読んだら、おもわず下町散策に出かけたくなります。歴史小説「鬼平犯科帳」のなかで登場人物が食べる「鮎めし」があまりにも美味しそうに描かれているので作ってみた事があります。
食べたい、作りたくなってしまうのが名随筆の困るところですが、お料理の本とは違ってレシピを想像しながら料理するのも楽しい。壇一雄の「壇流クッキング」でトンポウロウ、豚の角煮やおからの作り方を教わりました。
吉田健一「私の食物誌」、邸永漢「食指が動く」、沢村貞子「私の台所」など、食の名著をあげるときりがありませんが、中央文庫には廬山人など食の名著がけっこう多いので、本屋さんで好みにあった本を探してみてください。
(平成十四年六月)
「父の詫び状」
向田邦子=著 文春文庫
club king、mother dictionary、case studyより引用!
by reiko_sakai
| 2006-06-03 15:15
| 食