2006年 06月 29日
第5回 7月 パタパタ、ジュワー、ヘィイラッシャイ |
case study04
「spiritual foodは美味しい」酒井礼子
毎年七月になると思い出す夏の風物詩、七月七日の七夕、朝顔市…。風鈴の音色に誘われて下町の裏路地を歩いていると「ふと、今の香りは何かしら?」美味しそうな醤油の焦げる香り、なんという誘惑に満ちた匂い。もう頭の中に見える映像は、漆塗りのお重の蓋をあける自分の姿しかない、頬の内側ではそのお重の中身を味わい始めている。「ヘィイラッシャイ」暖簾越しに声、パタパタパタの音。体中の五感がすでに反応し、気がつけば席に座って「冷酒と白焼きをお願いします」話している自分に驚き我にかえった。
そうです、夏の疲れた体には鰻です。
東京に鰻屋は数々あれど、私が一番美味しいと推薦できるのは、伊豆半島の最南端、下田市に店を構える「小川家」の鰻は日本一!! この小川家さんのご主人、聞くところによると東京は東麻布の有名な鰻屋さんで修業されたとか、私と友人たちの批評は本家を上回る美味しさと仕事をされていると言っても過言ではない。下田は青い透き通る海と、白い砂浜、気のいいロコピープル、泉質が柔らかい温泉そして美味しい鰻。
下田在住の友人に連れていってもらった、鰻「小川家」注文してから鰻をさばき蒸すため、私のような食いしん坊は待ちきれませんから、伺う前には必ず電話をして温泉にゆっくり入り、お腹をすかしてから向かいます。
白昼の贅沢、日本酒に鰻の肝を味わい、柳川、白焼き、仕上げは細からず太からず関東風ふっくらと蒸し上げてから、炭火で焼き上げる鰻重か、蒲焼とご飯そして、ぬかみそ漬けです。ご主人が鰻を調理し、奥様がぬかみそ漬けをつけていらっしゃいますが、夏の茗荷漬けはこれまた絶品。香ばしい鰻、炊き立ての固めのご飯、たれ…ひとつひとつが完璧です。その上、声を大にして言いたいのは、ご飯とたれの量。このバランスで満足度は120%に達します。甘いだけのたれではなく、鰻の脂っこさを和らげるすきっとしたたれと、まさに「銀しゃり」と言うにふさわしいご飯が鰻を生かしています。さらに大切なのは、お漬物が美味しいこと、そして山椒の香りと色が良いこと、お漬物はぬかみそ漬けでなくてはいけません、特に夏場は絶対のお約束です。
ほら、ここまで読んだ貴方は下田行きの計画を立てずにはいられないはず、夏休みに一度お出かけしてみてはいかがですか?
平成十四年七月
club king、mother dictionary、case studyより引用!
by reiko_sakai
| 2006-06-29 12:21
| 食